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特集 伝統の里山を未来につなぐ 平成20年の冬、妙見の森ケーブルの冬季運休期間中に活動フィールドに向かうために歩いて登ったときのこと。辻本さんたちは、偶然にもエドヒガンを発見されました。 思いもよらない出会いにびっくりされたようですが、すぐさまエドヒガン保護プロジェクトが立ち上がったそうです。 発見したエドヒガンにはツルが巻きつきネザサが覆い茂っていたので、それらを取り除く作業から始まりました。 これを機に、平成21年に、「県立人と自然の博物館」に協力を依頼し、妙見の森のエドヒガン群生調査に着手。 調査をしてみると、エドヒガンの成木21本を確認できましたが、幼木は4本と少なく、幼木が育っていないことが分かりました。メンバーで相談した結果、何とかエドヒガンの命を引き継ぎ後世に残して行きたいという声が高まり、植樹プロジェクトが立ち上がることになりました。 まずはエドヒガンの種を採取するところから始まりました。エドヒガンの種が出来る6月頃に根元にブルーシートを敷いて落ちてくる種を採取。翌年2月に種を撒いて3月に無事に芽吹いたそうです。その後はメンバーの畑で約150本の苗木を2~3年かけて育てました。 平成23年3月には市民参加でエドヒガン植樹会を開催。後世にエドヒガンを引き継ぐ、大きな一歩を踏み出しました。 「エドヒガンは個性が違って興味深いよ」と辻本さんが話してくれました。なんでも、エドヒガンは自家受粉しないので個性が強く出るのだとか。 「花の色も満開になる時期も微妙に違う。けど、個性あふれるエドヒガン群生が満開になったときの美しさは忘れられない」と。エドヒガンを守ってきた親心とも言える一言に心が温かくなります。 最近では、猪名川町里山倶楽部が整備活動を行っている内馬場の森に完成した「エドヒガンの小こみち路」にもエドヒガンの苗木を提供するなど、団体の垣根を越えて横の連携が広がっています(P19参照)。  2年前、ナラ枯れが発生しているのを発見した際、「これ以上ナラ枯れが広がってしまうと、土砂崩れの危険性が増し、観光客にとっても良くない」と危機感を抱いた辻本さん。ナラ枯れの被害が起きやすい大木を伐採し、クヌギの植樹を定期的に行うことに。植樹用のクヌギは、自宅のプランターで育てておられます。 このように、観光地にある活動拠点であるからこそ、多くの人に来てもらって里山に触れて遊んでもらえるよう、整備活動を進めておられます。 さらに里山の魅力を案内できる仕組み作りができないか検討中で、ユニークなアイデアを募集中とのことです。辻本さんは「里山で遊び、里山の恵みを受け、皆で喜び合えることを続けていきたい」と話してくれました。妙見の森を訪れる観光客にエドヒガンの魅力を伝える『エドヒガンの命を引き継ごう』エドヒガン植樹エドヒガンの小径から満開の出会いの妙桜を楽しむ。エドヒガンの種エドヒガン出芽市民参加による植樹会の様子ツルが巻きつきネザサに覆われるエドヒガン。

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