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hitosato vol.3 p.12 川西市黒川の周辺地域は、現在も里山から木を伐りだし薪や炭として利用するといった、昔ながらの里山利用がされている数少ない地域で、次のような観点から「日本一の里山」と言えます。黒川一帯の里山林や炭については、非常に多くの古書籍や古文書・絵図に記述されています。黒川一帯で生産される一庫炭(池田炭)は、千利休や豊臣秀吉によって茶会で愛用され、少なくとも500年の歴史があります。現在でも茶道や料亭で最高級品として重宝されています。木炭の切り口が菊花状なので別名「菊炭」と呼ばれています。伐採後の萌芽の生育が早いこと、土地の境目の目印、シカ対策などから「台場クヌギ」として育てられているクヌギ林が見られます。台場クヌギとは、萌芽枝が出る主幹が太くなったクヌギのことです。クヌギを地上部より1~2メートルのところで伐採し、萌芽枝を育てて8~10年後に再び伐採することを繰り返すと、土台となる主幹がだんだんと太くなります。この地域では、炭や薪として里山を順番に伐採利用(輪伐)しているので、現在でも本物の里山景観が広がっています。本物の里山景観とは、伐採年の異なる様々な林分がパッチワーク状に連なっている景観のことです。黒川を含めた川西市には、エドヒガン(桜の一種)が群生している地域があります。その群生地は、レッドデータブック(※)のBランクで、その一部は川西市の天然記念物に指定されています。エドヒガンは3月下旬から4月上旬にかけて開花する桜で、日本に広く分布していますが、群生している地域はめったにありません。 ※絶滅のおそれのある野生生物(動植物)のリスト。パッチワーク状の里山景観を持ち、様々な植物群落が存在する黒川の里山林では、台場クヌギに生息するオオクワガタやカブトムシの他、ミドリシジミ類、オオムラサキなど、多様な動植物が生息・生育している生物多様性の極めて高い地域です。123456日本一の里山・黒川服部 保 氏兵庫県立大学 名誉教授能勢電鉄株式会社 顧問菊 炭台場クヌギパッチワーク景観エドヒガンオオムラサキ里山の第一人者 服部名誉教授に聞く『日本一の里山・黒川』絵 図

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