北摂里山博物館 


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多彩な里山資源


奈良時代に編纂された「万葉集」には、すでに北摂地域を代表する河川である「猪名川」「武庫川」両流域の地名が和歌の中に登場し、都人と北摂地域の深い関わりをうかがい知ることができます。
 
猪名川流域には、豊臣秀吉の埋蔵金が眠っていると伝承され、この地域の銀が豊臣家の財政を支えたとされている多田銀銅山などの鉱山跡が残っています。この地域の里山は、伐採年の異なるパッチワーク状景観を持続し、菊炭の伝承や茶の湯文化との結びつきからも「日本一の里山」と称されています。また、その周辺には「エドヒガン」や 台場クヌギが見られます。
 
一方の武庫川流域では、放置された里山を森林ボランティアなど地域の人々と協働で再生し、自由に散策できるフィールドとして整備するなど、里山と人との新しい関係が築きあげられています。またこの流域には、宝塚市玉瀬の丸山湿原、三田市下相野の皿池湿原など生物多様性に富んだ貴重な湿原が残されています。
 
このように、北摂里山は、歴史・文化そして自然などの多彩な資源が潜在する魅力ある場所なのです。

菊炭
エドヒガン
台場クヌギ

 

生物多様性の宝庫


北摂の里山林は、アカマツ林が最も広い面積を占めていますが、松枯れのために減少し良好な樹林は非常に少なくなっています。変わって増加しているのがコナラ-アベマキ林です。コナラ-アベマキ林は、三田市や宝塚市などの山足部や谷部に広がっています。一方クヌギ林は川西市北部と猪名川町南部の限られた地域に分布しています。

兵庫県全体をみてもクヌギ林の分布は少なく、当地域のクヌギ林は貴重なものです。 また、台場クヌギに生息するオオクワガタをはじめ、クヌギの樹液に集まるカブトムシ、クワガタ類、オオムラサキ、クヌギの葉を食べるアカシジミ、ウラナミアカシジミといった小さな美しいチョウ類などが生息しています。 北摂地域の里山林は生物多様性の宝庫であります。


台場クヌギ
ベニシジミ
オオムラサキ
カブトムシ

 

都市に近接した里山


大阪や神戸などの大都市に近接していることも北摂里山の特徴の一つと言えます。他地域の里山と比べ、鉄道や道路網の発達が著しく、大阪や神戸から1時間圏内に豊かな里山景観が残されています。平成28年度に予定されている新名神高速道路の開通で益々便利になり、大阪・神戸のみならず全国からのアクセスも期待できます。こうした地理的な条件は、都市と里山との交流を活性化させる大きな利点だと考えられます。
 

 

里山管理「兵庫方式(多様性高林方式)」


里山は生物多様性保全の観点から重要な地域資源であり、北摂地域では様々な取組が進められています。兵庫県は里山林を「人と自然の共生をめざした環境林・文化林」として位置づけ、全国にさきがけて「兵庫方式」と呼ばれる里山管理手法に取り組み、先進的事業として注目されています。 実際に北摂地域で兵庫方式を実践した結果、カスミザクラやヤマツツジなど約40種の植物の自生が確認された他、ギフチョウの生育の場でもあるヒメカンアオイが増殖するなどの成果を残しています。

 

 

環境への意識や市民力の高さ


北摂地域は、大正時代に「阪神間モダニズム」と称された新しい生活文化・ライフスタイルを発芽させ、近代の日本人の生活スタイルに大きな影響を与えています。北摂地域の市民力の高さは、このような阪神間モダニズムにも起因していると考えます。

北摂里山では、高い市民力に支えられ、森林ボランティアや環境活動団体によるさまざまな活動や取組が行われています。川西市の黒川地域や県立一庫公園、宝塚市の県立西谷の森公園、三田市の県立有馬富士公園をはじめ、北摂里山のいたるところで、30以上の団体が間伐や下草刈りなどの里山整備、自然観察会、環境学習などの里山活動が行われています。最近では、三田市のフラワータウン南公園が、「まちなか里山公園」として市民との協働による里山づくりが計画されており、伊丹市の昆陽池ではクヌギの植樹やホタルの生息空間づくり、オニバス等希少種の再生に向けた環境づくりを市民との協働により進めるなど注目を集めています。